「広告コピーってこう書くんだ!読本」。
真っ黄色なハードカバーにシンプルな題字がとても目立っていました。
広告コピーなど書く機会のないわたしですから正直言って必要のない知識です。
でも思い切りのいいデザインに思わず手に取ってしまい、何の気なしにパラパラとめくると偶然、懐かしいものが目に入ってきました。
知ってますか?Yonda?くん。
Yonda?くんとはパンダの姿をした新潮文庫のマスコットキャラクター。
新潮文庫の表紙カバーのすみっこに印刷されている葡萄マークを指定枚数集めて送ると、Yonda?くんグッズがもらえるというキャンペーンをやっていました。
確か川端康成や太宰治、夏目漱石などの文豪リストウォッチが目玉だったと思います。わたしが目標にしていたのはYonda?くんのキーホルダーと缶バッジセットだったなぁ。
調べてみると2014年にYonda?くんは任務を終えて中国に帰ってしまったようですね。
このYonda?くんが登場したときわたしはちょうど中学初めての夏休みを迎えたのを強く覚えています。
同じ頃、サンエックスのキャラクター:たれぱんだが一大ブームを巻き起こし、わたしたち女子中学生の間ではパンダ全般が大人気。
そこに新しく登場したYonda?くんでしたから、当然ながらYonda?くんグッズが欲しくなります。
小学生~中学生の夏休みは1日1冊何かしらの書籍を読んでいたため、手に取る本を全て新潮文庫に絞れば、葡萄マークを集めることもたやすい。
そうやって半ばよこしまな理由で(見事新潮文庫の思惑にはまり)新潮文庫ばかりを読んでいたので、Yonda?くんにはとても思い入れがあるんです。
「広告コピーってこう書くんだ!読本」の著者、谷山雅計さんはどうやらYonda?くんの生みの親であるらしいとわかると突然に興味がわき、「広告コピーってこう書くんだ!読本」を家へ連れて帰ることにしたのでした。
さてYonda?くんに思い入れがあるとはいえ、まったく訳の分からない広告コピーのお話です。
著者の谷山雅計さんは東大出身だと書いてあるし難しい内容だったら嫌だなぁ~と思いながらページをめくってみたのですが、字は大きい、行間は広い、言葉は易しい。そしてその先に何が書かれているのか気になってしまうようなサブタイトルのオンパレード。
「なんかいいよね」禁止。
葉っぱから森をつくろう。
みんなが言いたいことを言わせてあげる。
そりゃそうだ。そういえばそうだね。そんなのわかんない。
剣豪コピーと将軍コピー。
ほら、すごく気になりませんか?
谷山雅計さんはYonda?くんだけが代表作じゃない。
わたしがしつこくYonda?くんYonda?くん言っているだけで、ガス・パッ・チョ!や日テレ営業中♪など数々の名コピーを世に送り出している人。
そんなすごい人の頭の中を、様々な実例と共に本人のわかりやすい解説付きでのぞくことができるなんて!
本自体のボリュームとしては、そんなに多くはないかもしれません。
それにあまりに軽快に読めるので、「あれ、もうおしまい?発想体質を普段から作っておくことはわかったけど、結局のところ広告コピーを生み出すテクニックは何だったの?」って感じる人もいるかも。
けれど谷山雅計さんの言葉には、無駄がない。
たった一行の広告の向こう側の、まだ見るか見ないかわからない人に対しても細やかな気遣いをもって寄り添おうとする、人間的な優しさ。
それが「広告コピーってこう書くんだ!読本」全体にもよく表れていて、言葉ってこんなにも人柄を反映するものなのかと感慨深く感じました。
一見するとただの言葉遊びにしか思えなかったり、何の変哲もないコピーなのに、後からじわじわとくる不思議さは偶然生み出されているものではないんですね。
わたしもアタマのなかの‘‘ブラックボックス‘‘を明らかにするべく「なんかいいよね」禁止で、これからの生活を送ろうと思います。